「空き家問題と山梨市の対策」
新しいホームページでの初めての投稿をさせて頂きます。
昨今、新聞テレビ等でも皆さんよく目にしていると思います、深刻な社会問題となった「空き家問題」。実は、業界的には平成17年頃から耳にするようになっておりました。空き家の定義として「おおむね年間を通じて居住の実態がない建物や、それに付属する工作物とその敷地」とあります。皆さんもう『あっ、あの家そうじゃない?』と物件が思い浮かべられるくらい多くなって来ています。
原因は住宅のストック数と世帯数の推移にあります。戦後の焼け野原から住宅供給が始まって、1973年には、全国で住宅総数が世帯総数を上回りました。
そこでプラスマイナスゼロなのですが、バブルなどの経済状況に、新築こそ価値がある新築至上主義という概念が重なり住宅は増え続け、逆に少子高齢化人口減に伴う世帯数の縮小が、マイナス方向に拍車をかけて、国交省で調査した平成25年では、全国の住宅ストック数6,060万戸に対して、世帯数が5,250万戸とその差818万戸の住宅が余っていると言うことが分かったのです。
身近に換算すると、報道で聞いたことがある山梨県は空き家率22.1%で全国№1という話です。これは単純に言うと向こう三軒両隣の一軒は空き家である計算になります。
最新の調査ではこのまま行くと令和5年には約1,400万戸まで増加するという推計があるので。山梨県で考えると向こう三軒両隣の、さらにまたもう一軒のおじいちゃんおばあちゃん最近見なくなっちゃったねぇ、という状況になってきます。
しかし、当時は山梨県の空き家の中には別荘も含まれているのだから大げさだという感じで大した対策も正直されておりませんでした。
そんな時に山梨市では、全国に先駆けて「空き家バンク」という取り組みを導入し、全国的なモデルとなりました。現在約120軒の成約を行っており、空き家問題の解消と県内外からの移住人口増に成果を上げております。
しかし、その後多くの自治体で取組が開始されることにより需要と供給のバランスが崩れ、また購入改修を行って住める空き家という物も石油と同じで有限ですので、優良な空き家も少なくなり、山梨市自体の空き家バンク取引量は停滞してしまったのもまた事実だと思います。さらに追い打ちをかけるように特定空き家問題、とても空き家バンクで利活用できない、もう倒壊しそうで皆に迷惑がかかってる空き家が増えてきました。
そこで、山梨市で新たな空き家物件の掘り起こしと共に、先程お話させて頂いた、特定空き家の状態を調査するため、山梨市全体をブロックに分けて、現在一軒一軒調査を行っております。
また、物件が少なくなって取引量が縮小気味だった空き家バンクに関しても、農地が付いている空き家は今までは最小面積が山梨・牧丘地方で50アール(約1,500坪)以上営農しないと取引できず、これを下限面積といいますが、つまり農家さんにしか売れず、県外からの移住者など一般の人には買うことができませんでした。
農地法という農家さんを守るために必要な法律ですが、これが弊害となり取引できなかった物件に対し、空き家バンクの物件に関してはこの下限面積の撤廃をして、6月に山梨県で初めて農地付き空き家の導入を行い、今まで残っていた物件が取引できるようになり、今月第一号が契約となります。
この様に地元の様々な立場の方の思いを現実な取組として行動に移し、一歩一歩ずつですが、山梨市は山梨市の直面した問題に即した、空き家問題解消に向けて動いてる現状です。
今回私も空き家調査のお手伝いをさせ頂いておりますが、普段の生活では行かない道や、地域を訪れると、本当に特定空き家に指定すべき建物が多いのに驚かされます。
通行の妨げになるだけはなく、この前の地震程度でも倒壊により隣地に被害を及ぼすような建物、また、草木が生い茂り獣の格好の住処となっている建物が、田舎だけという訳ではなく皆さんの生活するすぐそばまで迫っております。
隣や近所に住む人たちには、日々の不安の種だけでなく、それを処理しようとしても個人の所有物ですので手を付けることもできません。
目に見えないから他山の石ではなく、私たち市民が差し迫った問題として理解することが先ず大切だと思います。行政としては調査、整理、権利者との調整、助言又は指導、勧告、措置と多くの壁、あと予算が多少必要だと思いますが、市民の理解があれば乗り越えられる問題だと思いますので、調査だけで終わるのではなく、このデーターを有意義に活用して頂きたいと思いました。